転生悪役令嬢のお目付役

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「殿下? 殿下! お目覚めだ。殿下がお目覚めだ!」

「医師の先生をお呼びしろ!」

「はい! 今すぐに!」

 騒がしい声が辺りに響いており、次第に意識が覚醒していく。

 ここがゲームの中か。

 目に入る家具は、俺の世界で言うアンティーク調のもの。そして、騒がしくしている人々は男性なのに、服装は首元にやけにフリルがついているし、ズボンは膝下から極端に窮屈そうなデザイン。

 時代は中世ヨーロッパ辺りの設定というところか。それにしてもうるさいな。王様か誰かが病気なのか?

 のんきな感想を浮かべている俺の脇に、誰かが座る。

「フィリップ王子、ご機嫌はいかがですか?」

 一度その人を見遣り、それから自分の隣にまさか王子が寝ているのかと、首を動かし確認してみても広いベッドではあるが、自分ひとりしか横になっていない。

「あの、フィリップ王子って」

 まさか。まさかだよな。

 嫌な想像はよく当たる。だったらもっと早くから察知しておけよって話。

 声をかけて来た人の顔色は、みるみる青ざめていく。

「フィリップ王子……。もしや、ご記憶を失われて……」

 まずい。どうやら俺が、フィリップ王子らしい。
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