転生悪役令嬢のお目付役

 博学そうな中年男性が大真面目な顔をして、俺に訴えかけるように言う。

「あなたさまはフィリップ・オリヴァー・ブランシェット。アルゼンタム王国、王位第一継承者、フィリップ王子にございますよ?」

「は?」

 声が漏れ、しまった。と思っても遅かった。辺りは騒然とし始める。

 声も漏らすというものだ。王子は王子でも王位第一継承者って、どう考えてもかなりの地位じゃないか。

「……ジュリアン嬢のせいだ」

 誰かの呟きに、場が凍りつく。

「おい。仮にも公爵令嬢だぞ」

「しかし……」

 数名が顔を俯むかせ、なにか言いたげに口を噤む。

「とにかくこの件は内密に」

「ああ、そして早急にジュリアン嬢と面会していただこう。なにかご存じかもしれない」

 俺を置き去りに話は進む。どうやらジュリアン嬢が悪役令嬢らしい。となれば、彼女が篠崎さんだ。
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