初恋物語~大切な君へ
こんなに広いソファーなのに?
近藤君がこっちに座りなよと近藤君の隣のソファーをポンポンと手で叩いて招いている。
えっと…これは行った方が良いよね?
だけど、ちょっと距離近いような気がするのだけれど…近藤君分かってて招いてるのかな?
「でも、こんなに広いソファーだから」
「広く使おうかなって。」
「でも、距離離れすぎだろ?」
「なんか寂しい…。」
なっ!なんだ!この子犬みたいな表情で
寂しいって言うなんて!
可愛い!なんか可愛い!
「わかったからそんな子犬みたいな」
「目で見ないで(笑)」
「俺、そんな目で見てた!?」
「なんか、恥ずかしくなった…。」
「ふふ♪」
「近藤君て意外と甘え上手?」
「そっ!そんな事ねぇーし///」
「素直になっても良いんだよ?」
そう言って私は近藤君の横に座った。
「とりあえずなんか唄う?」
「近藤君から唄って良いよ♪」
「近藤君の歌聴きたい!」
「えっ!!」
「俺は木梨の後でいいよ。」
「何唄うかも決まってないし。」
「それじゃ先唄うね。」
私は今話題のシンガソングライターの
MILKの向日葵と言う曲を選曲し、
唄い始めた。
この唄は初夏に旅先で出会った女性に恋に落ちると言う歌詞。
俺は木梨の唄っている姿に目を奪われていた。
なっ…なんて透き通った歌声。
つい聴き惚れてしまうくらい透明なその唄声に俺は言葉を失った。
ただただ唄っているこの瞬間、時がとまって俺と木梨の居る世界に変わったかのように俺はずっと木梨の姿を見つめていた。
そして曲が終わると呆気なく現実の世界に
引き戻されてしまう。
「ヤバ…。」
「あっ…ごめん下手だった?」
「最近この曲テレビで聴いてハマって」
「覚えたてなんだ(笑)」
「下手とかじゃなくて」
「その逆で…木梨上手すぎるなぁって」
「衝撃がすごすぎて驚き隠せなかった。」
「私なんてまだまだだよ(笑)」
「美桜は凄いんだよ!」
「めちゃくちゃ上手なの♪」
「プロ並だよ!」
「長谷川も上手いんだ。」
「だけど俺は今木梨の唄声聴いて」
「本当上手だと思ったし、」
「木梨の声や唄声好きだよ。」
「!//////!」
近藤君からこんなに褒められるなんて
予想もつかなかったからどう答えて良いのかわからずただものすごく照れてしまった。
「あっ///ありがとう…。」
「だからさ、もっと自信持ってよ。」
「う…うん///」
「つ…次は近藤君が唄う番だよ!」
「わかった。」
俺は木梨に少しでも俺の気持ちをさりげなく伝えたくて今の俺の心境に似た歌を選曲した。
中村俊司のUnrequited love(片想い)と言う曲を唄う。
この曲のサビは君に想いを伝えたいけれど今は伝えれなくて…だけどいつか言える時がきて叶うはずのない僕のこの想いを告げた時君はどんな顔するのだろうと言う歌詞がとてつもなく今の心境に似ていて好きだ。
俺は1つ1つの歌詞を想いを込めて丁寧に
唄う。
木梨が好きだ…中学の時からずっと好きだ。
1度は諦めた…とそう思い込んでそして
木梨とまた絡み始めて気付かされる。
やっぱり俺は木梨の事が心から好きなんだと。
諦めるなんて難しい…だったら無理して諦めなくて良い。
たとえ叶わなくても良い…時がきたら木梨に言おう俺の気持ち…そしてこれからも
想い続けるんだ。
俺は木梨以外好きになれない。
そう心で叫びながら歌を唄い終えた。
「木梨どう…!?」
「えっ!なんで泣いてんだよ!?」
私は近藤君の歌に惹き込まれた。
すごく気持ちの入った唄い方で
甘いボイス。
きっと近藤君の今の心境なんだろうなぁ
って心に刺さってくる。
片想いのこの想い、感情、刹那、歯がゆさ、寂しさ、一途さ、それぞれが重なって
苦しくてだけど愛おしいくて離れられない
と言わんばかりの感情…。
聴いている度に全てが糸のように繊細で
近藤君の世界へと惹き込まれ、
私はいつの間にか気付かないうちに
眼から涙が溢れ出していた。
そして想う…近藤君の想いがその子に届いて欲しいと。
実って欲しいと素直にそう感じさせた
圧倒的な近藤君の魅力的な唄声だった。
「だって…近藤君の唄っているの」
「すごくかっこよくて。」
「よっぽど片想いの子が好きなんだなぁ」
「って伝わってきて…。」
「切なさや、ちょっとした時の喜び」
「そしてどんどん深くなる愛の気持ち」
「がさ、こう…ドンッと私の胸に」
「響いちゃってさ…鳥肌たっちゃた。」
「近藤君にはこの恋頑張って欲しいなぁ」
「って心の底から思えたんだもん。」