初恋物語~大切な君へ


「雫、どーする?並ぶ?」




「私は大丈夫だけど」
「兄ちゃん、長時間並ばせるの」
「申し訳ないよ。」




「俺も全然平気。」
「雫と並ぶの飽きないしな(笑)」



「兄ちゃん」
「それ、どーゆ意味?」


私は兄ちゃんの意地悪な言い方に
冗談で拗ねて口の中に空気を膨らませていた。



「ほら、面白い!」
「そーゆのが全然飽きないんだよ。」




「なんだか喜んで良いのか悪いのか(笑)」


「喜んで良いよ。」
「とりあえず並ばなきゃだな。」




私と兄ちゃんはこうして、最後列に行き
並びはじめて40分くらい経過していた。
兄ちゃんは気付いてるのか気付いていないのかわからないけれど並んでる間でも周囲の人達が兄ちゃんの事見ていた。
女性や男性がその後ジロジロと私を見てくるのもわかった。
きっと勘違いされているのかな。
私と兄ちゃんが恋人同士みたいな。
だからこの女、全然釣り合ってねぇとかそんな感じで言われてるのかな…
私と兄ちゃんは兄弟ですよーだ。
そんなことをまた頭でぐるぐると考えていて兄ちゃんが私を何回も呼んでいる事さえ
気付いていなかった。





雫とパンケーキ屋に並んで40分以上経過しただろうか…。
その時、雫はまた考え事をしていた。
俺の声も入ってきていないみたいだ。
雫は不器用だ。
なにか考え事をするとこうして周りの声も聞こえなくなる。
そして1番心配なのは周り男達が雫を見ていた。
雫本人は気付いてないようだがかなりモテる。
小学校、中学の時も何度か家のポストにラブレターが入っていた。
まあ、あの中学の事件以降はなくなったが
それまではそこそこの量があって、俺は雫にポストに近づかせないようにしていた。
そして俺がポストを見る係を親に率先して
頼みこみ毎日朝と晩ポストの中を覗きに行ってはラブレターを回収して俺がラブレターを保管するようになっていた。
捨てたい気持ちはあるが、これは相手の想いのこもった手紙でさすがにそれはできなかった。
だからせめて、雫には気付いてほしくなくて。
俺は必死になっていた。
叶わない恋だから雫が他の男に行ってほしくなくて必死の行動だったのだと思う。
そんな事を思い出している間もまだ雫は
考え事していた。
そして前を見ると俺達の前に並んでる人は
先に進んでいた。


「おい!」
「雫。」


ダメだ…全然反応がない。




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