初恋物語~大切な君へ
「雫危ない!」
雫は明らかに体調がだいぶん悪そうだ。
マスク越しからも伝わる赤くなった頬、
そしてフラフラと身体が揺れている。
そして今、倒れそうになった雫を
抱き止めた。
その時長い雫の髪が俺の顔を横切ると
雫の髪からフローラルブーケーの香りが
俺の周囲にまとまり着いた。
ドキドキする心臓バレてないか焦る。
雫がこの状態なのにドキドキするなよ俺!
そう何度も何度も自分に言い聞かせた。
そしてお見舞いに買ってある胡蝶蘭は
何とか無事だ。
倒れる時の反動で潰れたと思っていたけれど花はしっかりと立派に植木鉢に支えられ立っていた。
「とにかく雫、俺の背中に回って。」
「なっ…なんでぇ?」
「このままじゃ雫自分で歩けないだろ?」
「そうか家にご両親いる?」
「居ないよ…。」
「今日、兄ちゃんもお父さんも」
「お母さんもばーちゃん家に行って」
「泊まってくるの。」
えっ?こんな雫を置いてばーちゃん家?
しかも泊まり?
意味わかんないんだけど。
何かしら事情あるのかも知れない。
「どうして雫を置いて行ってるんだ?」
こうして事情を聞いている間も雫の体温と心臓の音がトクトク俺の全身に行き届いている。
早くおんぶして家の中に入れてやらないと。
「えっとね…」
私は意識が朦朧としながらも説明を
していた。
颯太君に今私支えられてるんだ。
なんだろ…この気持ち…凄くホッとする。
「なるほどそーゆーことね。」
「それじゃ尚更安静にして」
「家族の帰り待っとかないとな。」
「おんぶしてやるから」
「俺の背中に回って乗れ。」
「えっヤダ…。」
「自分で歩け……」
おんぶ!?
そんなの恥ずかしいよ…
そんなの想像するだけでドキドキする。
あれ?
なんでドキドキするの?
初めて男子におんぶしてもらうからかも知れない。
とととにかく恥ずかしいので自分で
歩くのを試してみたがダメでそのまま再び
颯太君の胸に倒れてしまった。
「ほら、言ったろ?」
「おんぶしてやるから背中に」
「寄りかかりなよ。」
「でも颯太君荷物も持ってるのに」
「重たくならないの?」
「そんな事気にするな。」
「重くないよ。」
「俺にそんな気を使うな(笑)」
「俺に任せとけって。」
そう言って颯太君は柔らかい笑顔を私に見せた。
こんな時にその笑顔はずるい…。
なんだか颯太君がキラキラして見えてしまう。
彼はきっとみんなに優しいから…。
私は特別なんかじゃないんだから。
「颯太君ありがとう。」
こうして私はおんぶされながら家に颯太君を招き入れた。
そして私は一旦ソファーで横になることにした。
「雫、お見舞いにゼリーとアイス」
「買ってきたから家族と一緒に食べてね」
「颯太君ありがとう。」
「なんか気ぃ使わせてしまってごめん。」
「謝るところじゃないだろ?」
「素直に喜んどけ(笑)」
「うん、わかったよ。」
「じゃ、冷凍庫と冷蔵庫あけるね?」
「うん。」
雫の家の冷蔵庫を開けると綺麗に食材が
整理されている。
その中にゼリー7個を収納し、冷蔵庫に
アイスクリームも7個収納して、俺は
横になっている雫の傍に行った。
「雫、大丈夫か?」
横になっている雫と目線を合わせる為、
リビングのソファーの近くに座る。
「さっきよりかは少しマシだよ。」
「それなら良かったけど油断は禁物」
「だから歩けるまでここで横になる」
「と良いよ。」
「うんそーする。」