初恋物語~大切な君へ

俺はゆっくりとタンスに近付き、
5つの写真立ての中に収まっている写真を
左から順番に見ていく。
1枚目の左の写真は雫がまだ小学生の高学年ぽかった。
家族でバースデーケーキを囲んで雫がケーキのロウソクを消す瞬間を写している。
きっと雫の誕生日会だろうと思う。
2枚目の写真は中学の入学式の写真と思われる。お母さんと並んで正門の前で初々しい雫が満面の笑みでカメラに向かって笑顔を見せている。
そりゃー中学の時モテるわと思った。
この時に圭介は雫に恋してたんだな…。
気持ちはわかるけのだけどそう考えると胸がチクリと鈍い痛みが生まれる。
きっと本来の雫はこの姿なんだろうと
確信した。
今もそうだけど、前パンケーキであった時、この中学の入学式の写真はプライベートの時と中学の入学式だからイジメはその後の話しで、きっとイジメを恐れて
わざと学校ではあの地味子を演じているのだと思う。
友達になった次の日LINEではこう記されていた。
「学校ではあまり目立ちたくない」っと。
まぁ、でも普通に話しかけてるけど。
だって友達だろ?
それは普通の事だ。
雫に普通の日常を取り戻せてやりたいと
思ってる。
ここは俺と雫の頑張り具合いだな。

「雫!」


「なっ!何?」
「急に呼ばれるからびっくりだよ。」


「ごめん(笑)」
「なぁ、雫…俺雫が学校でも普通に」
「楽しく過ごせるように頑張る。」
「だから一緒に乗り越えような過去に。」
「俺が過去も全部受け止めてやるから。」
「だから雫は何も怖がる事ないよ。」
「今、大切に思ってくれる人たくさん」
「いるだろ?」
「家族、親友、そして俺に圭介に慎吾」
「俺らはみんな雫の事大好きだ。」
「1人じゃないからな。」


「颯太君…なんでそんなずるい事」
「言うの…そんな事言ってくれる人」
「初めてなの…。」
「私、変わる努力する。」
「私どこか心の底で颯太君が言って」
「くれていた言葉をずっと誰かに」
「言って欲しかったのだと思う。」


颯太君の口からずっと私が求めてきていた言葉が出てきた。
まさか颯太君に言ってもらえるなんて
想像がつかなかった。
だけど私はこの瞬間で確信が持てたのだ。
私、きっと颯太君が好きなんだ…。
いつも私にしてくれる事反則だなぁって
思ってきてたけど今の言葉は反則を越えているレベル。
「俺が過去も全部受け止めてやるから」
「だから一緒に乗り越えような過去に」
なんて早々言える物ではないよ。
颯太君の本気が伝わるし、大切に思ってくれているのが全身で染みてくる。
私…颯太君が好きそう気付いた瞬間だった。
だからと言って、私は想いをぶつけるのは
できない。
このままこの気持ちは心に閉まって置こう。
だって颯太君は将来、期待される御曹司で
住む世界が違う。
私はこうしていれるだけでじゅうぶんなんだから…。


「雫。」
「好きだよ。」



「うん…ありがとう。」



「なんか照れるな。」
「自分で言っておきながら(笑)」
「あっ、他の写真も見て良いか?」


「いいよ。」



再び俺はタンスにある次の写真を見た。
3枚目の写真に写ってるのは雫が幼稚園の頃の写真だった。
男の子に頬を抓られていて雫が大泣きしている瞬間を撮ったものだろ。
そして、そこの撮られた場所には見覚えがあり、幼稚園時代雫の姿も見覚えがある。
幼稚園の夏休み親の別荘で過ごしていた
時に知り合った女の子が目の前の写真に映し出されていた。
別荘にも遊びに行った事があるから良く覚えている。
間違いなく幼い時に俺が最初に好きになった女の子は雫だったんだ。
こんなのもう…運命じゃん。
人生で1番嬉しくて叫びたくなるがそれは
やめておいた。
雫は覚えているのだろうか…幼い頃の俺と出逢っていた事。
きっと…俺だと思わないだろうな。
あの時、お互い名前言ってなかったから。



「颯太君?」
「大丈夫?もしかして」
「風邪、移してしまった?」



「いや…大丈夫だよ。」



「なら良いんだけど。」
「颯太君、その写真から全然反応」
「みせないから…。」


「色々思い出してたんだ。」
「幼い頃の事を。」
「なぁ、雫…この男の子は誰?」



「兄ちゃんだけど…。」
「この時兄ちゃん私に意地悪ばかり」
「してたみたい。」



「お兄さんなら良かった。」
「あと、この別荘ある場所って」
「北海道?」



「えっ!」
「なんでわかるの?そだよ。」
「ここ、お母さんの親戚の人の別荘で」
「確か夏休みに毎年旅行で行ってた。」
「この年が最後になっちゃったけど。」
「親戚の人色々あったみたいで」
「この別荘売りに出して今は違う人の」
「持ち主になったの。」




「そっかぁ…だから翌年行っても」
「会えなかったんだ。」
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