初恋物語~大切な君へ

「うん。」


「じゃ、降りるの次だね。」
「今日は本当ありがとう助けてくれて。」
「命の恩人だよ近藤君は。」



「大袈裟な(笑)」
「でもまぁ、学校出るのちょっと遅れて」
「良かった。」



「感謝です(笑)」
「あっ、近藤君着いたよ駅。」



「スーー」


えっ!?近藤君寝てる?
そんな一瞬で?


「近藤君起きて!」


ゆらゆら肩を揺らしても起きてくれない!


「あっ、ドア閉まっちゃった。」

とりあえずもっかい起こそうと揺らそうと
した瞬間…

ポスッ…

近藤君の頭が私の右肩に倒れてきた。

どどどどうしよう!

とりあえず起こそう!


「近藤君起きて!」

私はさっきよりちょっと強めに近藤君の肩を揺らした。

「んん…木梨…」


「もう駅通り過ぎちゃったよ?」



「ああ…」
「木梨を送ってく…。」


俺は実は嘘寝をしていた。
俺のワガママだ。
もっと木梨と一緒に居たくて…。
また明日になったら学校ではこうして
2人では話せなくなる。
それに帰りが心配だから木梨の家まで送りたくて。
きっと木梨の事だから送ってくってその場で言っても「悪いからいいよ」って言われ
て断れるのが分かっていた。
だったら寝たフリをして、俺の駅が過ぎたらすぐ起きて送ると言おうと言う作戦。
木梨は予想外にも俺の肩を揺らしてくる。
そしてその度に木梨のシャンプーの香りが
俺の身体に入ってくる。
こんな小さい手で俺を一生懸命に起こしている姿が愛おしい。
そう思うと俺はいつの間にか木梨の右肩に
頭を乗せていた。
そうすると木梨の身体はピクっと反応した。
きっと驚いたのだろう思う。
そして、木梨が更に俺を起こすために強めに肩を揺すり始めてたのでここでそろそろ
起きる事にした。



「えっ!いいよ!」
「近藤君、一瞬で寝ちゃうくらい」
「疲れてるんだから。」


「でも、もう俺の駅通りすぎたから」
「送ってく。」
「ついでだから送らせて。」



「近藤君がそー言うなら…」
「お願い…しょうかな。」


「任せとけ。」
「ほら、駅着いたから降りるぞ。」


「うん。」


近藤君、大丈夫なのかな…
きっと今日疲れてるはずなのに。
家まで送ってくれるとか言ってくるし。
そー言えばいつも帰るの早いのに
今日は帰り少し遅れたって言ってたけど
6限目終わった後なにか用事してたのかな?
そうだったら尚更疲れてるのに私に気を遣わなくても大丈夫だからこのまま帰らせてあげた方が良いのかなと思う。


「ねぇ、近藤君待って!」


改札口を出ようとする近藤君を呼び止めた。
彼は後ろを振り向く姿は中学の時より
大人びてみえた。
左右のズボンポケットに手を入れながら
振り向く彼。
夕焼けの茜色に染まったこの空とすごく
合う。
って!見とれてる場合じゃない。



「ん?なに?」



「近藤君さ…!」



「ほら、早く改札口出るぞ。」


「あっ、ちょっと待って。」

近藤君は私の腕を引っ張り改札口まで誘導される。
完全に近藤君の流れに流されてしまった。


「本当に良いの?」
「送ってもらちゃって…。」
「今日、学校でも忙しかった」
「んじゃない?」



「えっ?」
「なんでそう思うの?」



「だって、近藤君今日いつもより」
「学校出るの遅かったんでしょ?」
「なんか用事で遅くなったのかなって。」
「だから忙しく挙句の果てに私の」
「おっちょこいなせいで助けなきゃ」
「いけない羽目になって。」



「木梨が気にする事ないよ。」
「学校出るの遅れたのはクラスの女子」
「に告られてさ。」



「近藤君モテるね♪」
「中学の時も結構告白されてたの」
「見たことあったもん。」




「木梨結構俺の事見てたの?」



「えっ!//」
「違うよー近藤君が告白される場所って」
「大体飼育小屋の近くだったでしょ?」
「近藤君が気付いてないだけで」
「私、あの事件前まで毎日飼育小屋に」
「寄って帰ってたから。」
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