ビニール傘を差し出したら、結婚を申し込まれました。
彼は嬉しそうにふわりと笑い、頬を紅潮させる。
そして、私の唇に優しくキスを落とす。何度か唇を重ねて、キュッと手を握って言った。
「優しくするから、あんまり怯えないでくれると嬉しいかな」
「っ……はい」
「もし痛かったり止めてほしかったりしたら、気にせず言ってね。言いにくかったら背中に爪を立てるとかでもいいから。……はじめてを嫌な思い出にしてほしくないし」
「多分、大丈夫だと思います」
私は握られていない方の手を、彼の頬に伸ばす。
「痛かろうが、ハルさんに触れられたことが嫌な思い出になるはずありませんから」
「本当に可愛いこと言うなあ……。でもあんまり煽ったらだめだよ?抑えが効かなくなって、優しくできなくなるかもしれないから」
「……?わかりました」
「あはは、本当かなあ。まあ、無自覚に煽ってくるのは想定内っちゃ想定内だけど」
ハルさんはそう言って私の手を持ちあげ、手首の辺りに口づけた。
──その後、彼は宣言通り優しく、ただし私の体力が尽きる直前まで、甘く私を愛し続けたのだった。