ビニール傘を差し出したら、結婚を申し込まれました。
……ということは、だ。
「えっと、じゃあ今日はこっちに帰っても……?」
「うん?当たり前だろう?直島さんが借りてる部屋なんだから」
思いがけずもう一つの選択肢が現れた。
──かくして、私は久々にこの年季の入った狭いアパートの一室に戻ってきたのだった。
家電類は備え付けなので、突然戻ってきても特に不便はない。食べ物と着替えはなかったので、それだけ買い出しに行った。
スーパーでタイムセールのお惣菜を買うのなんて久しぶりだ。久しぶりすぎて主婦の皆さんの勢いに負けそうになった。そして服は、安い店の中でも一番安いもので一式そろえた。もうファッションとかはどうでもいい。
古びた浴室でシャワーを浴び、大袈裟な音のする電子レンジでお惣菜を温め、19インチの小さなテレビの電源を入れた。
味の濃いお惣菜を食べている途中でふと思い出してケータイを見る。一応ハルさんに、今日はアパートに泊まるからそっちには帰らないとメッセージを送り、バッグの奥にしまった。
「ごちそうさまでした」
スーパーのお惣菜やコンビニの弁当は美味しいけれど、やはり手作りの料理の方が美味しい。
特に面白いわけでもないバラエティー番組を見ながら、何故ハルさんはアパートえお解約したと嘘をついたのだろうと考える。
いや、その理由は普通に「解約したから戻る場所はない」と脅せば彼の思う方に話を持っていけると考えたからか。むしろ、彼なら色々と手をまわして本当に解約しておくことだってできそうなのに、何故そうしていなかったのかを考えるべきか。
やはり元々私との関係は短期間のものにするつもりでいたからなのか。
それとも──