ビニール傘を差し出したら、結婚を申し込まれました。


 軽く唇を噛まれたかと思うと、それを最後に彼の唇は私の唇から離れた。代わりに、耳、頬、首筋、鎖骨へと順々にキスが落とされていく。


「ひっ」


 変な声が出そうになるのをどうにかして堪える。ハルさんはそれがわかっているかのように、何度も意地悪くキスをしてくる。


「可愛い。本当に可愛い」


 そう言う彼の目は、危ない熱が宿っているように見えた。

 誰もが認めるであろう綺麗な顔に、溢れんばかりの色気が加わり、かっこいいという感想を通り越してクラクラする。


「夏怜ちゃん……。もっと君に触れたい……いい、かな?」


 ハルさんは吐息混じりの声でそう聞いてきた。


「抱きたいってことですか」

「……うん」


 頬に熱が集まるのを感じながら、私は静かにうなずいた。

 それを見た彼は、私の額に一つキスをすると、ソファーから降りて、ひょいと私を抱え上げる。

 そのまま隣のベッドルームまで歩き、柔らかいベッドの上に優しく私を下ろした。


「本当に大丈夫?まだ心の準備ができてないなら、無理に今からは言わないけど」


 ハルさんは自分のネクタイを煩わしそうに外しながら聞く。

 まあ正直、心の準備ができているとは言い難い。だが、このまま雰囲気にのまれてしまっても良いかなという気分だった。


「大丈夫……」

「ん、わかった」


 ハルさんは瞳に熱を帯びたまま、ゆっくりベッドに上がる。ギシりとベッドがきしむ音がするたび、心臓が口から飛び出そうなほどに跳ね上がる。

 頭を支えられながら押し倒された。

 彼のしなやかな指が、私のブラウスのボタンを一つ一つ外していく。


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