自動手記人形は私の隣に〜海を越えて「愛してる」を〜
これほど自分を心配してくれる人はいるのだろうか?すみれの心が揺れる。

すみれはどれだけ辛くても、作り笑いをするのが得意だった。それで周りを欺いてきた。でも、ヴェリーナとドイツにいた頃出会ったあの人にはその作り笑いは通用していない。

「ヴェリーナ、私、後悔していることがあるんです……」

すみれは重い口を開く。家族にさえ話していないドイツでの出来事だ。

「私は、男性が少し苦手で友達は女の子しかいませんでした。でも、私が苦しいのを誤魔化して頑張っている時に、クラスメートのギルベルトという男性が声をかけてくれたんです。「無理して笑う必要はない。苦しい時はちゃんと言わないとダメだ」って……」

自分の気持ちに気付いてくれる人がいた。それが嬉しく、すみれは異性で唯一ギルベルトだけ声をかけられるようになり、休日に遊びに行ったりするようにもなった。

「日本に帰ると両親から言われた数日後、ギルベルトから「愛してる」と言われました。でも、日本に私は行ってしまう。どうしたらいいのかわからず、私は告白の返事をしないまま、ここに来ました。……本当は、私も愛しているのに」
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