自動手記人形は私の隣に〜海を越えて「愛してる」を〜
中庭が近づいてきた時、すみれは足を止める。中庭の方から声がした。誰かがいるのだ。しかし、それは話し声ではなく歌声だった。鈴を転がしたような美しい歌声だ。その歌はすみれの聞いたことのある歌だった。


Life is a journey
Feelings of hopelessness, loneliness
she sweepe them all away


「violet snow……」

すみれはポツリと呟き、足を早める。それはすみれの一番好きな小説、アニメである「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」のPVで流れている曲だ。「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」とは、少女兵として育てられてきた主人公のヴァイオレットが、手紙を代筆する自動手記人形という仕事を通じて人として成長していく物語である。すみれはこの作品が大好きで、映画やアニメを何度も見て、原作も何度も読んでそのたびに感動の涙を流してきた。
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