自動手記人形は私の隣に〜海を越えて「愛してる」を〜

どんな人が歌っているのだろう、ヴァイオレット・エヴァーガーデンが好きな人なんだろうか、ドキドキしながらすみれは広い中庭を歩く。すると、木の下に立って歌っている女子生徒を見つけた。その女子生徒を見た刹那、すみれの心が奪われていく。

その女子生徒は、スノーホワイトのリボンタイワンピース・ドレスの上にプルシアンブルーのジャケットを着ていた。ココアブラウンの編み上げブーツを履き、エメラルドグリーンのブローチが胸元で煌めいている。さらに髪は複雑に編み込みがされ、ダークレッドのリボンで飾られていた。

「ヴァイオレット・エヴァーガーデン？」

コスプレではなく、まるで小説やアニメの世界から本物が飛び出してきたかのように、目の前の女子生徒はヴァイオレット・エヴァーガーデンにそっくりだ。違うところをあげれば、ヴァイオレットの髪は月の光のような金髪だが、目の前の女子生徒は白い髪をしているというそれだけだ。

あまりの美しさに見惚れてしまうすみれの目の前で、女子生徒はニコリと微笑むとスカートを持ち上げ、優雅にお辞儀をする。そしてルージュが引かれたその唇が動いた。