自動手記人形は私の隣に〜海を越えて「愛してる」を〜
「お初にお目にかかります。お客様がお望みならばどこでも駆けつけます」

女子生徒はそう言った後、顔を上げる。仕草一つ一つまでヴァイオレットにそっくりだ。ヴァイオレット・エヴァーガーデンの実写化などできないだろうとすみれは思っていたが、彼女なら完璧にヴァイオレットになれるかもしれないと思ってしまう。

「あなた、見ない顔ね。ひょっとして私のクラスに来た日本人の転校生?」

そう女子生徒に訊ねられ、すみれは「もしかして、あなたがあの席のドイツの方ですか?」と驚く。ドイツにいた頃、たくさんの美人と呼ばれる人を見かけたが、こんなにも人形のように綺麗な人を見るのは初めてだ。

「ええ。私の名前はヴェリーナ・フィッシャー。三年前から日本で暮らしているの。アルビノだから体育の授業には出られないけど、仲良くしてほしいわ」

「アルビノ……」

だから彼女の髪は白いのだとすみれは納得した。アルビノはメラニン色素が少なく、紫外線に直接触れると皮膚癌のリスクが高くなってしまう。そのため、注意が必要だ。
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