自動手記人形は私の隣に〜海を越えて「愛してる」を〜
「同じ作品を好きなもの同士、お友達になりたいわ。あなたの日本でのお友達第一号になりたい」

ダメかしら?と手を差し出される。手袋のついた手だ。この手袋はヴァイオレットのように義手を隠すものではなく、紫外線から手を守るためのものなのだろう。

「よろしくお願いします。ぜひ、お友達になりたいです」

好きな作品のことをたくさん話したい、そんな思いが大きく、すみれはヴェリーナの手を取った。その手は柔らかく、温かい。

それと同時にあの時の後悔が浮かび、すみれの中には様々な感情が生まれて複雑になっていった。



ヴェリーナと距離がさらに縮まるのに、それほど時間はかからなかった。好きなものが一緒ならば、話に困ることはないからだ。

「すみれ、お昼にしましょう」

「はい。今行きます」

すみれとヴェリーナはお弁当を手に、中庭へと向かう。他の生徒たちは教室や屋上、食堂を使うため、中庭は二人っきりのことが多い。そのため、ゆっくりと作品のことを語れるのだ。

ヴェリーナは日にあたらないよう、日傘を差して歩く。その日傘も、作品の中でヴァイオレットが劇作家のオスカーからもらった水色に白のストライプ、フリルのついた可愛らしい傘だ。
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