わたしたちの好きなひと
「近いのは西明寺だな」
 掛居が笑って、わたしの口にキャラメルを押しこんだ。
「そうだね」
「どうやら意見は一致したみたいだし。行こうぜ、シューコ。山田なんか、クソくらえ」
「カケヒぃー、言葉ルかいには、気をつけラハい?」
 わたしも笑いながら、ほっペの片側にキャラメルをよせる。
「わたしは……いいよ。ふたりで…行っておいでよ。ウォーリーは、わたしがまたフォローしてあげる」
「なに言ってんだよ。せっかく久しぶりに3人なんじゃないか。なぁ、恭」
「ん…? うん――…」
 恭太の足が、蹴とばす石を探している。
 3人……。
 めまいがするのは、低血糖のせいだけじゃない。
「そういえば、さっきのお守り…どうした? 恭太」
「あ? ああ…」
 そうだ!
 わたしのお守り。
 どうしよう。
「シューコでも、お守りなんか買うんだな。なんのお守り?」
 掛居がわたしに言って、恭太の手元をのぞきこむ。
「返して!」「…交通安全」
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