わたしたちの好きなひと
「まさか、鈴木も参加してくるとは思わなかったけどね」
 そもそもドライヤーすら持ってこなかったわたしは、洗いっぱなしの髪を、ちょっぴり開けた窓からの風で乾かせれば問題はなくて。
 岡本は、そんなわたしの横でカッコよくアグラをかいて、事後報告の最後にさしかかっている。
「…ふふん。教師なんて、ちょろいもんね」
「…………」
 同じようなセリフを掛居がわたしにつぶやいていたって知ったら、岡本だって掛居とは友だちになるしかないと思うはず。
 あの生き物は敵にまわしちゃダメなやつだから。
 (ふぅ…)
 そりゃあ、20人からの女子に泣かれちゃ、ウォーリーだってタジタジだっただろうけど。
 岡本とベンチ組のみんなが協力するなんて。
 恭太は幸せだね。
「――チケット代、無駄にならなくてよかったね」
「まったくだわ」
 持参の小さな鏡で左右のバランスを確認しながら、ドライヤーの熱風で整えられていく岡本の髪がふんわりウェーブしていく。
 掛居も岡本も、わたしのまわりには、どうしてこんなにきれいな子が集まるんだろう。
 自分で比べて落ちこんだりはしないけど。
 恭太に比べられていると思うと…いやだ。
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