わたしたちの好きなひと
「創立記念日に合わせた日程ですからね。運動部諸君には毎年、やきもきされられますですよ」
「そのうえ今回はおれたちのせいで……。寛大な処置、ありがとうございました」
「なに、そこはレットバイガンズ、ビーバイガンズ。反省しとればよろしい。ね、掛居くん」
 ウォーリーも、うんうん。
 周りに集まった女の子たちも、うんうん。
 (すごいね)
 恭太の声が線香花火みたいにピチパチと放つ光。
 囲むみんなは本当に楽しそうだ。
 「…………」
 わたしだけ。
 わたしだけなんで、窓に映る恭太しか見られないのかな。

 山田の質問に、ええ…とか、はぁ…とか答えている恭太の声。
 ときどき岡本も参加して、サッカー部のほかのメンバーの行先について、女の子たちに聞いたりしている。
 とてもなごやかな集団だけど。
 声だけに耳を澄ませているからわたしは気づいた。
 掛居の声は聞こえない。
 心配でちらっと見たら、掛居は組んだ自分の腕の上でピアノを弾いていた。
 イライラしているときのくせだ。
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