わたしたちの好きなひと
第12章『プレイバックpart4』
あれは、中3の3月。
明日は、公立高校の合格発表という日。
* * *
「明日はおれ、ひとりで行くからな」
恭太がうしろの席から、ぼそっと言った。
「…うん」
答えながら、ほっとため息をついたりして。
(そうだよね)
恭太だって緊張するよね。
わたしも、もう昨日あたりから不整脈でドクンドクンする。
どうぞみんな、受かっていますように。
自己採点では、特に大きな失敗はしていないと思うけど。
やっぱり一高は、わたしにとってはチャレンジだから。
発表を見るまでは、大丈夫だなんて一瞬だって思えない。
「あれ? 恭太はひとりで泣きたいの? じゃ、シューコは? どうする?」
掛居が恐ろしいことを言いながら、斜めうしろで伸びをした
「どうしてそんなこと言うの。そんなの、ジョーダンに聞こえると思ってるの?」
「シューコはひとりで泣けないだろ、弱虫だから。おれと行くよな」
「…………」
そりゃ、ひとりで泣くなんて。
絶対、絶対、そんな事態にはなりたくないけど。
「もっと言いかたを考えてよ!」
掛居が余裕なのは、一高が滑り止めだったからだ。
もう開成の合格は決まっているし、結果なんて見なくてもいいようなものだから。