わたしたちの好きなひと
 恭太は結局、電話してこなかったから。
 一斉登校日に久々に顔を合わせた教室で、のんきな顔で手を振られたとき、がまんしていたものがドーッとあふれだして。
 だらしなく開いた詰襟のすきまから、お守りをねじこんでやったけど、神様だって怒らないと思う。

『ま。大学でまたばったり、っていうのもアリよりのアリ?』

 同じ高校に行こうって、約束していたわけじゃない。
 掛居がわたしたちふたりに出した課題はハードすぎて。
 わたしたちは、それぞれに、がんばる理由をもらっただけだ。
 だけど――。
 言葉にされて、気づいてしまった。

 ただでさえ、性格も好きなこともちがうのに。
 ちがう高校に進んで。
 それぞれに、ちがう友だちができて。
 変わっていく姿も追えなかったら、わたしたちはどうなるの?
 それでも友だちでいられるの?
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