わたしたちの好きなひと
第15章エピローグ『わたしたち』
本当のところ。
なにがおきたかなんて、だれにも言ってない。
ひとり。
岡本をのぞいては……。
「稲垣ぃ、今日、帰りにちょっとさ、弟のクリスマスプレゼントの下見したいのよ。つきあってよね」
「あら、岡もっちゃん。えらいねぇ、姉の鑑ね」
「そうでしょう? だけどオスガキの趣味なんてわかんないからさ。そのへんきっとくわしい稲垣に助けてもらおうかと思ってぇ」
ぎくぎく。
「あれ? でも岡本さん、部活は? お休み?」
「まさか。わたしのかわいいシューコちゃんは、わたしが部活おわるまで、待っててくれるのよ。ねっ?」
「…………」
もちろん岡本は、わたしの返事なんて待ってない。
さっさと教室を出て行ってしまった。
「はぁ…」
どうせ今日は恭太の練習を見ていこうと思ってたから、いいんだけどね。
あの目、あの口、あの態度。
横暴だ! …と思うのに。
すっかり言いなりの自分がなさけない。