わたしたちの好きなひと
 騒ぎから目が離せなくなったわたしのお尻を、笑いながら恭太が叩いた。
「ミーハー」
 だってぇ。
 始まっちゃったものは最後まで見たいじゃないの。
「ほら、行くぞ、シューコ」
 掛居にまであきれられてしまった。
 なさけない。
 みんなには任せてって言ってきたのにね。



 ロビーは、こっそりもどる必要がないほど大さわぎ。
 やじうまの群れのなかにクラスのみんなの顔が見えた。
 みんな、非常口から戻ってきた7人のばか侍プラスワンの顔を見つけて、まるでヒーローが帰ってきたような喜びよう。
 ジェスチャーゲームみたいに、あっちとこっちで百面相をしている。
 わたしは、安心した足元からミーハー元気がすーっと抜けてしまって。
 脱力してうつむいた目で見た、前を行く掛居の膝の横で揺れているモノに悲鳴をあげそうになってしまった。
「か…掛居っ」
 スニーカーを履いた足。
 ブリキのバケツからのぞいているのは――
 ランタン、百円ライター、花火、花火、花火。
 なにそれ、なにそれ。
 あわあわバケツを指さすわたしに、掛居はにっこり笑った。
「…ね。足元は明るくするし。消化対策もゴミ処理も万全。だからシューコが心配することなかったの」
「…………」
 なんか……。
 なんか、ちがうぞぉ、掛居ぃ。


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