わたしたちの好きなひと
 サッカー部マネージャーの岡本は、恭太の1番の理解者は自分だと思っているのか、掛居が恭太を独占しそうなときは、いつも身構える。
 それに気づくのはわたしも恭太が好きだからなんて……。
 絶対に知られちゃいけない、わたしだけの秘密だ。

「稲垣ったら!」
「――はーい」
 本当なら近づいちゃいけなかった恭太の関係者。
 仲良くなってしまったのは、わたしのせいだ。
 夏にいっしょにプールを休んだとき、生理痛がひどくなって教室に薬を取りに行くこともできなくなったわたしに、あれこれ世話をやいてくれて。
 さすがにマネージャーさんだなぁ、恭太も助かってるだろうなぁ…って。
 ひとり、しみじみ思っていたのに。
 あっけらかんとされた裏話。
『実はね、パーマかけてんの、わたし。プールなんて冗談じゃないわ』
 …とかって。
 それまでは、制服も着くずさないし、掛居みたいに平然と教師もばかにする子とちがって、正真正銘の優等生だと思っていたから、もうビックリ。
 それからは、うしろめたい思いも抱えながら、仲良くしてもらっている。
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