わたしたちの好きなひと
 待ってよ、どこ行くの?
「な一に、ケンカ?」「どうしちゃったのよ?」
 ええ…い、もう。
「岡本ってば!」
 岡本は、にんまり笑ってふり向いた。
「いいから言ってごらん。あんたのシュミ、興味あるし」
 あー、やられた。
 岡本ってば、こういうところ掛居とそっくりね。
 結局は自分のいいように、わたしを誘導するんだ。

 わたしが女子の委員になったのは岡本のせい。
『あいうえお順でいいじゃない』って。
 即、11対1で決まってしまった女子の流れを見て
『じゃ、男はおれが』って掛居が手をあげてくれた。
 あのときわたしにニヤッと笑ってみせたあなたの策略の全貌が、やっと! わたしにも見えたわ。

「で? なんですって?」
「…………」
 どうしよう。 
 もうみんなに注目されちゃったもん。
 委員がまだノーアイデアだなんて、恥ずかしくて言えない。
 これだから頭の良い子ってきらいよ。
 でも本当にどうしよう。
 絶対、絶対、掛居が選ばない場所。
 恭太がいやがる場所。
 えと…、えと…。
 (そうだ!)
「タカラヅカ!」
 (あ…れ――?)
 なぜ静まる。
 なぜ、みんな黙る。
 (いや――ぁ)

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