わたしたちの好きなひと
第5章『プレイバックpart2』
あれは中3の夏休み。
掛居が選んだのは、東京の私学に強い著名塾ではなく。
わたしたちと同じ、地元の私大が主催している進学教室だった。
* * *
「掛居、私立ねらいだよね? いいの? こんなことしてて」
午後からは、社会と理科。
どちらも恭太の得意科目だから恭太はご機嫌だけど。
私立の受験科目は国・英・数の3科目だし。
「掛居には、どっちも関係ないでしょうに」
小さな公園には、わたしと掛居のほかはだれもいない。
空にはギラギラと太陽が昇っていて、いくら昼休みでも、わざわざエアコンの利いた教室から外に出るもの好きはいないし。
感覚としては駅の裏側だと思う西口改札から出て、さらに1本奥まった場所にあるビルの谷間には、そもそも人影もない。
ふたりでキーコキーコと錆びた音をたてるブランコをゆらして待っているのは、じゃんけんで負けた恭太だ。