わたしたちの好きなひと
 男のお尻なんて、むしろ蹴ってやる。
 ザッとスニーカーの底を鳴らして仁王立ち。
 指を恭太のお尻のビニール袋にのばしたら、横からやんわりとおろされた。
「いいよ、シューコ。待ってな。おれが出してやるから……」
「掛居ぃぃ」
 ありがとぉぉぉ。
「なにホッとしてやがる。将来のプロリーガーの黄金のケツだぞ。さわらせてもらえるなんてありがたく思えや」
「はぁぁあ?」
 額をこすりそうににらみあうわたしと恭太の間に、すうっと伸びてきた掛居の手には、びちゃびちゃに濡れた紙カップ。
「うわーん。わたしのチョコレートチーズケーキチョコクッキーキューブミックスぅぅぅ」
 ふにふにしているけどまだ固形だ。
 続いて渡されたスプンを握りしめてブランコに着席。
「いただきまぁ…………」
 (ん?)
 疑問を抱きつつひとくち。
 やっぱり、だ。
 恭太ぁぁぁぁぁ!
「なによ、これ。ただのチョコレートアイスじゃないの! あたしはチョコレートチーズケーキチョコクッキーキューブミックスって言ったのよ」
「ばかやろう。チョコレートチーズケーキチョコクッキーキューブミックスなんて覚えられるか!」
「おぼえなさいよ! あんた受験生じゃないの。そんな記憶力じゃ、どこも受からな……」
 (あれ?)
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