わたしたちの好きなひと
「なんか不思議だね。掛居とは3年間いっしょだし……。来年はもう掛居がいないなんて……不思議」
「じゃあ、シューコも一高、受けろよ」
 ――――はぁっ?
「や…、なに言ってんの? なに掛居、公立は一高なの? いやだ。どんな偏差値してんのよぅ」
 考えてみたら、どこを受験するかなんて、ひとに聞いたことも自分でしゃべったこともない。
 掛居が私学ねらいなのを知っているのは、掛居がわたしに話したからで、自分からはなにも話さない恭太のことは、わたしと同じコースを選んでるんだから公立ねらいなのね、くらいに思っていた。
 うちの中学は校外活動でめざましい活躍をしている学校じゃないし。
 まさかスポーツ推薦をもらえる子がいるだなんて。
 それが恭太だなんて。
 本当に、ちらとも頭になかった。
 それって、わたしがのんきだからなの?
 …というか。
「ちょっと待って。それじゃ私立って、いったいどこを受けるつもり?」
「ん? 親は巣鴨や海城も受けてほしいらしいけど。めんどうだから開成1本」
「…………」
 ――――はい。
 深呼吸。
 なんですって? 
 メンドウダカラカイセイ?
 そう言いました、いま?
 なにそれ、なにそれ。
 この異世界人、やっぱり異世界人だったんだわ。
< 56 / 184 >

この作品をシェア

pagetop