わたしたちの好きなひと
 それは一瞬だったけど。
「岡本も、もの好きだよな」
 (ああ……)
 そのひと言で、恭太はわたしの心臓をぎゅっとつぶした。
 呼吸もできないほどに。
 (そ…うか……)
 そうだよね。
 4人…だ。
「恭太の参加も決まったし。あとはおれに任せてくれていい」
「…………」
 ばかなシューコ。
 ちょっとでも、いい気になったりして。
 恭太にとってわたしなんて掛居の付属品だ。
 岡本……。
 お…かもと、なの…ね。
 そうか……。
 気づかなかった――。


 帰りの掃除のとき、めずらしく岡本がそわそわしていたから避けたのに。
 岡本は強引に、わたしを廊下のすみに連れこんだ。
「わたしも、ここからは堂々と修学旅行の話ができる立場になったけど。あんた…どうするの? 自由行動」
「知らない。まだ決めてない」
「やっぱり! どうしてよ? 掛居氏はあんたのために、がんばってくれたのに、なにが気にいらないのよ。男子に冷やかされたから?」
「そんなのじゃない」
「じゃあなに? わたし? わたしがくっついて行くから? だからそこは、すぐふたりっきりにしてあげるって言ってるでしょ」
「そんなのじゃ…ない!」
 岡本の茶色いサンダルを、ぐるんと避けて床にモップをかける。
 掃除だ。
 掃除しなくちゃ。
「冷たいのね」
「…………」
 わたしが返事をしないから、岡本は黙ってあとをついてくる。
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