わたしたちの好きなひと
「わたしは太秦…行く」
 掛居の細い指が、わたしの目の前に、わたしの書いた素案届を持ち上げて。
 ビシュィ――ッ
 机に舞ったのは、真っぷたつに割かれた紙。
「ゃ…! なにすんの!?」
「却下」
「掛居っ!」



 委員会の間、掛居は静かに怒っていた。
 大きい声を出すとか。
 あからさまに無視するとか。
 そんなのだったら負けないのに。

「今年はおおまかに分けて16通り…ってとこですね。あと、3人以下のこの、競馬場だの、灘の酒造だの…、この13人は、またプランのたてなおしをしてもらうことにして――。こっち、長屋王の墓希望の生徒は、生駒か信女山チームと合流させて時間割を再考。問題はこの宝塚ですかねぇ。どのクラスも2、3人の連名で希望者がおりますね。合同にしても支障はないかな?」
「…………」
 本当に、女の子の情熱ってすごい。
 3人の連名で届が出ているのは、4人だと班として成立しちゃうからだ。
 サッカー部が旅行に参加するって決まったあと、提出までさして時間もなかったのにな。
 ま…あ、掛居と恭太が宝塚なんて、クラスの男子もおもしろがっていたから、ほかの組の子たちにも話がもれて、一度提出したものを下げて、書き直した子もいるのかも。
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