わたしたちの好きなひと
 そのあと、きょろきょろお互いを見回して。
「ぶぁっはっは」「ぷぷぷ」
 わたしと恭太は大笑い。
 お盆を抱えて半歩さがったお姉さんに、ひとりだけ冷静な掛居がにっこり。
「ぼくのカレ、です」
 それがまたおかしくて。
 笑って、笑って、笑って。

「はぁ…はぁ…、ねえ? もしかして、みんな、そう思ってんのかな」
「よせやい。ケホ、ケホ…ンあー、むせた! ちょっと、拓弥(たくみ)、ナプキン!」
 掛居は片手で紙ナプキンを引っぱりだして、ストローでオレンジジュースをかきまぜながら、わたしたちをあきれたように見てる。
「ほれ……」
「なんだよ?」
 ナプキンを受け取りながら、恭太が代表質問。
 うん。なんだろう?
 わたしと恭太の視線を受けながら、掛居はゆっくりジュースを飲んで。
 スローモーションのような優雅さで椅子に寄りかかった。
「おれたちがどうだって。それが世間てもんだろ」
 ええ一っ。
 気を持たせておいて、そんなありきたり?
「そうなの? そんなの、見る目がないにもほどがある」
「うん。ない、ない」
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