わたしたちの好きなひと
 わたしと恭太がうんうんうなずいているのを見て、掛居が腕を組んだ。
 それは、わたしたちには考えられもしないことを、掛居がきちんと説明してくれようとするときの、お決まりゴッドポーズだから。
 わたしと恭太は、肩をすくめあって謹聴の型。
「たとえばね。…この座りかた、どう思う?」
 どうって……?
 わたしと掛居が並んで座っていて。
 恭太は向かいでひとり。…ってこと?
「いつものことじゃないの、ねえ」
 わたしが首を傾げながら恭太に同意を求めると、恭太はめずらしく真面目な顔で掛居のことを見ていた。
「なるほど。シューコはおまえが好きだってことか」
「えっ。なんで?」
「だって、好きだからくっつきてぇんだろ」
「はぃ?」
 唇を尖らせちゃって。
 不機嫌そうに、なにを言いだす?
「待ちなさいよ、そりゃ…掛居は好きだけどさ。あんたのとなりは狭いからに決まってるでしょ。足は広げるし、ものは散乱するし。だれだっていやだわ、あんたのとなりなんて」
「なんだ、それ…」
「なんだ…って。あんたが変なこと言うから! くっ…つきたい、とか、そんな……、ちがうしっ」
「…………」
 うわ。
 なんで黙る?
 掛居ぃ。
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