わたしたちの好きなひと
「おれ、もうおまえたちと、しばらく…つきあえない」
 レジでお姉さんに挨拶していて最後にお店を出てきた恭太が、外で待っていたわたしと掛居に、さっきの掛居よりも、もっと真面目な顔で言った。
「恭太……?」
「とりあえず…目標は人造人間だからさ。血も涙もないんだから、おれがどんな態度を取っても怒るなよ」
 な…にそれ?
「恭太?」
「特にシューコ、おまえ! もうおまえのヒスになんか、つきあってやんねえから。おれなしでも強く生きろよ」
「恭太!?」
 恭太は、わたしと掛居の間をするっと通りぬけて走っていく。
 ひとつ向こうの街灯の下で、立ち止まって振り向いた恭太の詰め襟のボタンは、みんなはずれていた。
「…ちょっと。やめなさいよ。風邪ひくよ、恭太!」
 かまわず上着をぬぐ恭太に、もうどうしていいかわからない。
「走って帰る!」
 やっぱり!
「やめなさい、恭太」
「サンキュー、拓弥(たくみ)。すっきりした」
「どういたしまして」
 ちょっと。
 わたしを無視して、いま飛び交ったセリフは、なに?
 わたしがちょっと掛居を見たすきに、白いワイシャツ姿の恭太は、本当に走って横断歩道を渡ったところ。
「なんなのよっ」
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