わたしたちの好きなひと
 バスは嵐山・高雄パークハイウェーを北上。
 山城高雄で散開したあとは、各自お弁当を持って集合まで自由時間。
 強制的に集団で移動させてくれれば、どんなにかラクなのに。
 自主尊重、自他敬愛の校風って実は無慈悲な放任よねえ。
 そんなことは微塵も感じないのか、岡本はまたさっさとひとりで歩き出すし。
 またしても猛獣係に任命されたわたしは、とぼとぼ岡本のあとについて行きながら地図を見る。
 神護寺(じんごじ)に向かってるのか。
「ここって、紀子さまが、かわらけ投げってやつに挑戦したとこなんだよ」
 こんな言いかたをすると、委員会で作成した資料を丸暗記しただけなのがバレちゃうけど
「そんなのどうでもいいわよ」
 岡本は相変わらず不機嫌だ。
 仕方なく黙ってあとをついていく。

 たどりついた山門のまわりは、まばゆいばかりの紅葉で神々しくて。
「おお…」
 天まで続いていそうな急勾配の階段を見上げて感嘆。
 ほかの観光客のみなさんも、まずは立ち止まって見上げているのに、岡本はガンガン階段を上りだした。
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