このせかいに在るがまま
壱. しりたがりなふたり
「さがしてるのって、これ?」
だれもいなくなった放課後の教室で、ゴミ箱をあさっていたわたしにそんな声がかけられた。
ぱっと振り向くと、そこにはクラスメイトの星原くんが立っていて、差し出された手にはわたしが探していたものが握られていた。
「…それ、」
「落ちてたよ、下駄箱に。捨てられてたわけじゃなくてよかったね」
星原くんが笑う。
穏やかだけど、どこか心のこもっていない笑顔だった。
ゴミ箱に突っ込んでいた手を抜き取り、パンパン…と埃をはらう。
正体もわからない黒いよごれや、フルールジュースかアイスの汁だと思われるべたべたとした液体が手にこびりついていて、ゴミ箱に手なんか突っ込むもんじゃないな、と頭の片隅で思った。
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