このせかいに在るがまま




―side 天晴―




姉ちゃんが目を覚まさなくなってから、もう3年が経つ。


ながい夢を見ているみたいだ。どんな夢なんだろう。気になるけれど、3年も見続けるほどよっぽど良い夢なんじゃないかと思う。

もしくは、この世界に戻って来ることに怯えているのかもしれない。




3年前、星原 海歩は自殺した──いや、正しくは“自殺未遂”をした。


おれたち兄弟が通っていた小学校の屋上から、姉ちゃんは飛び降りたのだ。





『ね。空っていいよねぇ…。誰も殺さないんだよ、そこにあるだけで安心感がすごいでしょ。落ち込んだ時に空が晴れてるとなんとなく心も軽くなるし、逆に雨が降ってると胸がざわついたりする』


脳裏をよぎるのは、初めてあの壮大な星空を見た日のこと。姉ちゃんが言っていた言葉にどんな意味が込められていたのか、正解は姉ちゃんしか知らない。


聞こうと思って3年。

姉ちゃんは、まだ眠っている。


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