このせかいに在るがまま
姉ちゃんが小学校の屋上から飛び降りた日の天気は雨だった。
『ねえ天晴、星見に行こう』
結構強い雨が降っていたので、いつも通りの姉ちゃんの誘いをおれは断ったのだった。
『どうして』
『雨強いから』
姉ちゃんは週に何度も星を見に行くようになっていて、おれがその付き添いになることも珍しくなかった。
もう卒業した小学校ではあるけれど、侵入経路は変わらない。警備が改善されることもなかったので、おれと姉ちゃんが中学生になってからも頻繁に訪れていた。
ばあちゃんはいつからか、おれたちが夜に学校に忍び込んで星を見に行っていることに気付いていたみたいだけど、なにか口を出してきたことは1度もなかった。
二人なら安心、そう思っていたからかもしれない。
姉ちゃんは頑固で意固地なところがあるから、その日もどうせ無理やり連れていかれるのかな と心のどこかで思っていたのだ。
雨の日に星は見えない。
空は曇っているし、傘だって邪魔だ。
けれどもし雨の日でも星が見えるなら、それは少しだけ気になる。
姉ちゃんが無理やり言うなら、仕方ないと言って付いてってあげてもいいかなと、おれはそう思っていた。