このせかいに在るがまま
雨の日は心がざわつく。
姉ちゃんが昔言っていたそれは本当だった。
強い雨の音と 時折落ちる雷の音が相まって、心臓は感じたことの無い速さで脈を打っている。
あんなに強い雨の日に星を見たいなんて言う姉ちゃんの 心に気付くべきだった。
おれを"良い"という姉ちゃんが嫌いだった。何がどんな風に良くて、どこがどのように姉ちゃんと違ったのか。おれは、それをずっと知りたかった。
『いいね、いいなぁ、天晴は』
良くない、何も、良くないじゃないか。
部屋のドアを開けると、そこに姉ちゃんは居なかった。膨らんでいた布団を勢いよく剥ぎ取ると、そこにはぬいぐるみが何体か置いてあって、まるで自分が寝ているかのように見せかけられていた。
どういうことだよ、なんだよこれは。
沢山あるぬいぐるみのうちのひとつに、姉ちゃんが昔からずっと大事にしていたうさぎのぬいぐるみがあった。耳に紙切れが結ばれているのをみつけて、そっと手を伸ばす。
4つに折られたメモ帳には、姉ちゃんの綺麗な筆跡でこう書かれてあった。