このせかいに在るがまま
どんな気持ちだったんだろう。姉ちゃんは何を思っておれ宛にこの手紙を書いて、星を見に行ったのだろう。
『ねえ天晴、星見に行こう』
『今日はやだよ』
『どうして』
『雨強いから』
『うう、そっかぁ。わかった、今日はやめとこ』
おれがいつもみたいに「いいよ」って言っていたら、姉ちゃんを止められたのだろうか。
手紙を読んで駆け出したってもう遅い。
「どこに行くの天晴」ばあちゃんの声を無視して、裸足のままスニーカーを履いて、傘も差さずに走って向かった小学校。
屋上から見て真下に位置する 花壇の柔らかな土の上に───姉ちゃんは血を流して倒れていた。
木がクッションになったことと、落ちた先がグラウンドの固い砂の上ではなく花壇の柔らかな土だったことが不幸中の幸いだった。救急車で運ばれた姉ちゃんは、なんとか一命を取り留めた。
それから3年。
姉ちゃんは、まだ目覚めない。
───今日の星が綺麗だったら、もう少し生きてもいいかなって思えるような気がします
あの日 姉ちゃんが見た空は綺麗ではなかったのだろうか。
死にたくなるほどの空を、おれはまだ知らない。