このせかいに在るがまま
全部くだらない。何も信用できない。
姉ちゃんが死にたくなる原因を作った世界は、どこも綺麗じゃない。何も素晴らしくない。地球温暖化が急激に進んでもいいから、まるごと燃え尽きて全員いなくなれ。
憎い奴ら全員の死に顔をみれたなら───おれも、死んでしまえばいい。
「…………んだよ」
「え?───っ」
「うるせえんだよさっきから。ゴミみたいなことばっかほざいてんならさっさと死ねよ、不愉快だから」
おれもお前も、さっさと死んで、灰になって埋められろ。
きゃああ!と悲鳴が上がった。机が倒れ、椅子が倒れ、「ッがは、ほっ、ほしはら、」と苦しそうな声を漏らす新山が目の前にいる。
「……、お前が勝手に姉ちゃんを語んなよ」
新山の胸倉を掴む手に力がこもる。プチッと弾けた第1ボタンが床に転がった。
「先生はやく!」
「新山くんが死んじゃうよ」
「なにしてるのあなた達!」
うるさいうるさい、耳障りだ、何もかもが。
泣きそうだった。新山も、おれもだ。わからないけれど無性に泣きたくなって、感情のままに世界を呪った。
握りしめた拳を新山の頬にぶつけた時、感じたのは、ただ"痛い"ということだけだった。
人を殴ることは痛い。
おれも相手も"痛い"からやってはいけないのだと、身をもって知った。