このせかいに在るがまま





姉ちゃんは本来なら受験生だったけれど、目を覚まさないまま月日が経って、おれの受験がやってきた。



新山のことを殴った日から、クラスメイトはおれを怖がるようになった。友達だと思っているやつは元々いなかったし、おれの顔を見てキャーキャー騒いでいた女子たちが減ったので ある意味好都合だった。



父には 県内トップの高校に行くように言われていたけれど、おれは言いなりになりたくなくて、姉ちゃんが本来めざしていた学校を志望した。



偏差値は、父が希望する学校に比べるとかなり低い。「せめてあと偏差値が5高いところにしてくれ」「天晴は海歩とは違うだろう」「どうしたってわざわざ海歩似合わせるんだ」「何がしたいんだお前は」色々言われたけれど、全部無視することにした。



そうしているうちに、段々両親もおれを諦めるようになった。おれとしては好都合、望んだ結果だった。



高校に入ると同時に窮屈な家を出て、一人暮らしを始めた。もう、両親は反対しなかった。


姉ちゃんの病院にも、おれたちが居なくなって一人暮らしに戻ったばあちゃんの家にも定期的に足を運んでいる。両親からは月に一度口座にお金が振り込まれているだけで、目を見て会話をすることはもう一年近くしていない。



それが良いのか悪いのかは、今もずっとわかっていない。



< 119 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop