このせかいに在るがまま
「…それは、どういうこと?」
なんとなくでそう聞いた。
星原くんの言っている意味がどういうことなのかわからない。だからなんとなく気になった。
わたしの行動理由はいつもそれで、深い意味は含まれていなかった。
「おれは、こんなせかいで普通に生きるのは割に合わないなって思ってる」
落ち着いたトーンで落とされる。わたしの過去の話をする前に汚れを綺麗に洗い流していた両手に、じわりと汗がにじんだ。
「だっておもわない?芽吹さんは山岸たちの勝手な嫉妬で嫌がらせをうけるようになった。顔は可愛いし成績は優秀。女子特有の馴れ合いも友達ごっこも参加しない、クールな一匹狼はかっこいいしあこがれるよね。
でも人の9割はくだらないプライドの塊だから。『わたしも貴方みたいになりたい』なんてさ、素直に言えるわけがないんだよ。
教師たちが見て見ぬふりするのは、自分のクラスでいじめが起きている事実を公にして自分のキャリアを汚したくないから。結局そのうちバレて、隠ぺいしていたことを叩かれるってわかってるのに、ほんと人間って学習しないよね」
「理不尽すぎてわらえる」星原くんがここにはいない人間を嘲笑うように言った。