このせかいに在るがまま







「…この間、ばあちゃん家で転んじゃって。本人は平気って言うんだけど、70歳も超えてるし結構心配でさ。検査入院してるんだけど、じいちゃんはいないし、親は相変わらず仕事命だからそばにいてやれるのおれしかいなくて。病院、姉ちゃんと同じとこなんだ。ばあちゃん家の近くにあるんだけど」




星原くんが1週間学校に来ていなかった理由は、その影響があるらしい。


電車で3駅、15分ほどで着くあの駅。

星がよく見える、星原くんのお姉さんが飛び降りた、プラスもマイナスも詰まった小学校からさらに歩いて20分ほどのところに病院はあるといった。




「ばあちゃんまでいなくなったらどうしようってさ、おれ、時々怖くなるんだ。何かあった時に走って行ける距離に居ないだけで不安だったから、ずっと付きっきりで病院に居た。面会時間が終わったらばあちゃんの家に帰って、学校に行くか迷って、結局いかないを繰り返してた」



「心配させてたなら、ごめんね」星原くんが謝った。



星原くんはさっきから謝ってばかりだけど、彼が謝ることなんて本来ならばなにもなかった。

彼は彼なりに自分の大切なものを守ろうとしていただけで、学校という窮屈な箱の中に縛り付けられて生活するよりずっと正しい時間の使い方だと思う。



首を横に振ると、星原くんは力なくわらった。



< 121 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop