このせかいに在るがまま
「あの、それで…おばあちゃんは」
「うん。検査終わって、今日の昼には家に帰った。特に異常はなかったから大丈夫」
「…、そっか。よかった」
よかった。星原くんの大切なものがなくならなくて、本当に良かった。わたしが安心するのもおかしな話ではあるけれど、本当にそう思うのだ。
大切なものは、可能な限りそばにいてほしいと思う。
「今日本当は学校来るつもりなかったんだけど、…もしかしたら芽吹さんに会えるかと思って、来た」
どき、心臓が騒ぎ出す。「タイミングが良いのか悪いのかわからなかったけどね」と苦笑いを浮かべる星原くんに、わたしはどう反応していいかわからずそっと目を逸した。
星原くんの言葉のひとつひとつがわたしの影響を与えていることに、彼は気づいているのだろうか。
まともに話すようになってからたった数週間の仲なのに、まるでずっと昔から知っていたみたいに、お互いのことを理解しているような気がする。
この世にひとつくらいは、名前のない関係があってもいいんだなと、星原くんに教えてもらった。