このせかいに在るがまま
少しだけぎこちない笑みを浮かべてわたしの机に駆け寄ってきたのは、委員長だった。
『何も出来なくてごめんなさい』と謝った彼女。
昨日、山岸さんたちから逃げるように教室を去っていった彼女。
「あの、あのね、わたし本当は助けたかったの。ずっとずっと何も出来ないままだったけど、芽吹さんともっと話してみたくて……でも、山岸さんたちがいたから…。、あの、でも、でもね、今日は山岸さん休みだし……っていうか多分もう来れないと思うんだけど、だってこれまであんなに酷いことしてきたんだもんね、当然の報いっていうかっ」
「……報い?」
委員長の言葉が気になり、意味を理解するべく言葉を復唱する。ちらり、普段ならクラスの一軍たちが集まる山岸さんの席に目を向けると、そこからはぽっかりと机がなくなって居た。
なるほど、そういうことらしい。
そこに山岸さんの居場所はなかったことにする。クラス一丸となって、いじめの主犯だった彼女に"報い"を与えると、このクラスでは"そういう"答えを出したみたいだ。
昨日の今日で情報が回るのが早いな、と思ったと同時に、散々わたしを無視してきたクラスメイトたちが何食わぬ顔で挨拶をしてくることに 嫌悪感を抱いた。