このせかいに在るがまま
クールでミステリアスな星原くん。
教室ではひとりで本を読んでいることが多い。隣の席になってからも、わたしと星原くんは挨拶さえもまともにしたことがなかった。
星原くんはわたしを避けていたわけではなかった。ごく自然に、わたしと彼のあいだには距離があった。
彼のことを友達だと思っている人はたくさんいて、仲には恋心を抱いている人もいる。
その数は決して少なくはなくて、彼はこのせかいに適応した恵まれた人間なんだなと、わたしは勝手に思い込んでいた。
「おれの隣の席。芽吹さんだから、目をつけられたんだよ」
「…もし、わたしじゃなかったら?」
「羨ましいとは思われていてもいじめにまでは繋がらないと思うよ。それが普通だし、芽吹さんはただ不運が重なったのもあるけど」
わたしとは格がちがう。
それは今も変わらず思っている。
けれど、最初の頃より星原くんが近くに感じるのは───彼の、本音の所為だろう。