このせかいに在るがまま





星原くんだった。


いつの間に来ていたのだろう。星原くんはいつだって登場が突然で、それでいてヒーローみたいなタイミングなのだ。

星原くんの顔を見ただけで、どうしてかホッとした。



「……あぁ?」

「芽吹さんの次は山岸?相当暇なんだねホント」




表情からは読み取りずらいけれど、なんとなく怒っている気がする。なぜなら、今の星原くんには既視感があるからだ。


つい昨日の話。山岸さんの心を 正論でグサグサと突き刺したあの時と、今目の前にいる星原くんは同じ雰囲気を持っている。



「んだよ星原。もしかして怒ってんの?芽吹が他の男に絡まれてるのがムカついた?星原って澄ました顔して実は結構束縛とかするんだ。つうかさ、怒るってことは付き合ってるってマジなんだ?星原って芽吹みたいなのがタイプなの?」




今すぐ発言を慎んだ方がいい。星原くんは怒らせるべきではない。ゴミみたいな自論を並べてへらへら笑っているような人達を、星原くんは嫌っている。


山岸さんや滝口くんみたいな人のせいで不満がどんどん募っていくのだ。




『早く死ね』

それが、わたしたちが世界に抱く感情の行き着く先だった。



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