このせかいに在るがまま
「山岸の家の事情、滝口は随分前から知ってたんじゃないの。どの経緯かは知らないけど、山岸と関係を持ったことで居場所がないって聞いて、お前は山岸に『芽吹透和子を虐める』ことで存在価値を与えた。どうせ、「芽吹のことが気に食わない」とでも言ったんだろ」
もし、本当に───今 星原くんが言ったことが本当だとするならば。
「すごいね星原。名探偵にでもなれんじゃねえ?」
ハッと息を吐いた滝口くんが、わざとらしく拍手をする。「いやーすごいすごい」と心のこもっていない声で言うと、空いていたわたしの前の席にドスッと座った。
「なぁ、知ってる?人を動かすのはいつだって愛なんだぜ」
「愛、ね」
「そう、愛。山岸はさ、俺のためならなんでもしてくれる。俺が望む世界を作りあげてくれる。山岸は俺のこと『あたしが居ないと何にもできない』とでも思ってるのかもしれないけど、本当は逆。"俺が居たからなんでも出来た"んだよ、あいつは」
同じ人間だと思いたくなかった。
昨日、山岸さんの情緒がおかしくなった時も 彼女の人間としての神経を疑ったけれど、その時よりも遥かに強い嫌悪感が押し寄せている。