このせかいに在るがまま






「山岸の家の事情、滝口は随分前から知ってたんじゃないの。どの経緯かは知らないけど、山岸と関係を持ったことで居場所がないって聞いて、お前は山岸に『芽吹透和子を虐める』ことで存在価値を与えた。どうせ、「芽吹のことが気に食わない」とでも言ったんだろ」





もし、本当に​───今 星原くんが言ったことが本当だとするならば。





「すごいね星原。名探偵にでもなれんじゃねえ?」




ハッと息を吐いた滝口くんが、わざとらしく拍手をする。「いやーすごいすごい」と心のこもっていない声で言うと、空いていたわたしの前の席にドスッと座った。



「なぁ、知ってる?人を動かすのはいつだって愛なんだぜ」

「愛、ね」

「そう、愛。山岸はさ、俺のためならなんでもしてくれる。俺が望む世界を作りあげてくれる。山岸は俺のこと『あたしが居ないと何にもできない』とでも思ってるのかもしれないけど、本当は逆。"俺が居たからなんでも出来た"んだよ、あいつは」




同じ人間だと思いたくなかった。

昨日、山岸さんの情緒がおかしくなった時も 彼女の人間としての神経を疑ったけれど、その時よりも遥かに強い嫌悪感が押し寄せている。




< 137 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop