このせかいに在るがまま
伍. かわれないふたり




その日は雨だった。




「くれぐれも羽目をはずしすぎないように───」



本格的に冬が始まった12月の後半。

いつもは綺麗に空が顔を出している教室の窓からの景色も、ここ数か月じゃ久しぶりの大雨に、今日はひどく澱よどんで見えた。


後期の修了式を終え、担任が気の抜けた声で 冬休みの心得が書かれたプリントを読み上げている。



来年は3年生になるので、受験に向けての準備を各々進めておきましょう。体調管理をしっかりしましょう。課題は特に出さないけど、勉強を怠らないように。



クラスメイトのうち、その声を真面目に聞いている人なんてきっと5人もいないだろう。


明日からの冬休みをどう過ごすか。いつがバイトだからとか、いつなら空いてるとか、どこに行きたいとか。

みんな当たり前に楽しい冬休みの想像を膨らませていて、やる気のない担任の話を聞くどころではないのだ。



頬杖をつき、窓越しにザーザーと振り続ける雨を見て小さく息を吐く。




今日も、世界はなにもかわらない。




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