このせかいに在るがまま





「芽吹」



そんなことを考えていると、後ろから声がかかった。振り向くと、そこには担任の小宮先生が立っていて、「今日も残っていたんだな」と落ち着いた声色で言った。



小宮先生は、半年前に比べて生徒に積極的にかかわるようになった。


そのきっかけとなったのは言わずもがな山岸さんや滝口くんがクラスからいなくなったことであるけれど、大方職員室で話題になったのではないかなと思う。



同時期に問題児だった2人が学校に来なくなったのだ。

「小宮先生のクラスは何をしているんですか」とか「どうして気づかなかったんですか」とか、もしかしたら職員の一部から非難を受けたのかもしれない。




わたしたちのクラスも分かりやすく落ち着いたので、小宮先生本人も生徒に対する恐怖心が消えたのだろう。


授業中や日直の日以外で先生の方から話しかけてくるなんて珍しいどころか初めてのことだ。




「はい」と短く返事をすると、先生はわたしの席から2つほど離れたクラスメイトの机に浅くすわり、ふう…と深く息を吐いた。



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