このせかいに在るがまま
「その……なんだ。…元気か、最近は」
「…はい?」
先生に対して失礼な返しだったということは言った後に自覚した。あまりにも予想外だったのだ。
山岸さんたちに絡まれるわたしを見て見ぬふりして、まるでいじめなんてないかのように扱っていた先生が、だ。
先生が守ってきたであろうキャリアを傷つけたかもしれない存在だから、嫌われているものだと思っていた。
「…あ、一応、元気です」
戸惑いながら答えると、「…そうか」と返ってきた。
返事のしようがない。
何か用だろうか。出し忘れた課題でもあったのか。もしくは───…わたしが毎日放課後残っていると知っていて、今日ようやく勇気が出たのか。
「星原の、ことなんだが」
「…え」
「芽吹には言っておかないとと思ってな。仲良かっただろう?」
先生は気づいてくれていたのだろうか。星原くんとわたしに交流があったことがクラスメイトに伝わった時は、小宮先生が出張に出ていた日だった。
その前日だって、山岸さんとその他二人にしか、わたしと星原くんが一緒にいるところは見られていないはずだ。